藤田医科大学 腫瘍医学研究センター

研究

診断が困難な中枢神経原発悪性リンパ腫における遺伝子異常を、脳脊髄液リキッドバイオプシー技術を用いて発症早期に検出

悪性リンパ腫の確定診断には、生検によって採取された腫瘍組織を顕微鏡で確認する、いわゆる「病理診断」が必須です。しかし、脳や脊髄に病変をもつ「中枢神経悪性リンパ腫」は、手術による生検が困難なことも多く、疾患の早期診断に苦慮することがしばしばあります。診断の遅れは予後不良と関連し、できる限り早期に診断できる技術の確立が望まれています。今回藤田医科大学血液内科学と脳神経内科学の共同研究グループは、脳や脊髄の周りに存在する「脳脊髄液」を用いた「リキッドバイオプシー1)技術」を用いて遺伝子変異解析を行いました。脊髄に病変を持つ患者さんについてデジタルPCR2)を応用して脳脊髄液中に存在する微量なリンパ腫由来の遺伝子異常を検討したところ、脳脊髄液中のリンパ腫細胞を種々の方法で検出する従来の方法に比べて約1ヶ月早くリンパ腫の存在を検出することができました。
リキッドバイオプシーの技術を用いて異常遺伝子を検出することのみで悪性リンパ腫の確定診断を行って良いかどうかについては、未だ世界的に議論のあるところです。現在さらに多くの患者さんについて検討を進めており、脳脊髄液を用いた異常遺伝子の検出が、中枢神経悪性リンパ腫の確定診断に寄与するかどうかについて解析を行っています。

 

1) リキッドバイオプシー:血漿(末梢血の液体部分)、脳脊髄液、胸水、腹水などの、患者さんの液体成分から遺伝子を抽出して、悪性腫瘍から流出する異常遺伝子を高感度に検出する方法

2) デジタルPCR法:既に報告のある遺伝子異常について、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による遺伝子増幅技術を応用して、異常遺伝子の存在割合を定量的に解析する方法

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