限局性前立腺癌におけるBRCA2欠失の意義について
研究の概要
最近の研究から、BRCA遺伝子変異の意義は、転移性去勢抵抗性前立腺癌の発症に関与していることが示唆されている。一方、限局性前立腺癌におけるBRCA variantの頻度や意義の詳細は不明である。
本研究では、藤田医科大学腎泌尿器外科学 糠谷拓尚助教らのグループが、in-house次世代シーケンサー(NGS)システムを用いて、限局性前立腺癌におけるBRCA variantの頻度と臨床的意義について検討した。
限局性前立腺癌の診断で手術を施行された126例の腫瘍組織を用いたNGS解析結果
- BRCA2 copy number (CN)は17例(13.5%)、BRCA1 CNは6例(4.8%)で低下していることが判明した。
- NGSベースのCN値は、droplet digital PCRベースのCN値と高い相関があることが示された。
- Human Protein Atlasを用いて調べた組織特異的なBRCA発現から、BRCA1ではなくBRCA2のCNの低下がPCにおけるBRCA活性の低下の原因であることが示された。
- BRCA2のCNが低下している患者のうち10人は、体細胞ヘテロ接合体欠失があると推定された。
- BRCA2のヘテロ接合体欠失と様々な臨床病理学的パラメーターとの間に関連は観察されなかった。さらに、10例中3例が術後3カ月以内に生化学的再発を起こした。
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多変量解析の結果、診断時血清前立腺特異抗原(PSA)レベルとBRCA2 CNが生化学的再発の独立した因子であることが明らかになった。
本研究から、BRCA2 CNの減少が、限局性前立腺癌における術後の再発を予測するバイオマーカーとして使用できる可能性が導かれた。NGSを用いたBRCA2の体細胞変異の早期スクリーニングは、前立腺癌進行のリスクを広く予測するのに役立つ可能性がある。
発表論文
タイトル:
Estimating copy number to determine BRCA2 deletion status and to expect prognosis in localized prostate cancer
掲載誌:
Cancer Medicine