藤田医科大学 腫瘍医学研究センター

研究

ヒト多中心性骨肉腫における新規ハイスループットスクリーニング法を用いた特異的バイオマーカーの探索

研究の概要

多中心性骨肉腫は、肺転移前に複数の骨転移が同時、または非同期的に発生する骨肉腫の一種であり、予後が不良な疾患です。本研究では、藤田医科大学整形外科学 藤田順之教授らのグループと橋渡し研究シーズ探索センターバイオリソース室などとの共同研究において、本学で新たに樹立したヒト多中心性骨肉腫細胞株の細胞表面に発現する抗原を網羅的に解析し、CAVIN1/PTRFが特異的に発現していることを報告しました。

本研究で明らかになったこと

  1. ファージディスプレイ法を用いて、多中心性骨肉腫細胞株の表面抗原の網羅的な抗体スクリーニングを行い、蛍光ELISA法によるハイスループットスクリーニング法を開発しました。
  2. このスクリーニング法にて測定した蛍光強度と従来のフローサイトメトリー法による測定結果は、有意な相関をみとめました。
  3. 蛍光強度が高いクローン抗体の中で、多中心性骨肉腫細胞株に強く反応し、一般的な骨肉腫細胞株にはほとんど反応しない抗体を絞り込むことができました。
  4. この抗体と多中心性骨肉腫細胞株のライセートを反応させ、抗原抗体複合体を免疫沈降法にて回収してSDS-PAGEにて電気泳動を行い、特異的バンドを質量分析装置にて解析したところ、抗体が認識している抗原はCAVIN1/PTRFであることが判明しました。
  5. 最後にCAVIN1/PTRFの市販抗体を用いて確認実験を行ったところ、多中心性骨肉腫の組織標本や細胞株とは強く反応しますが、一般的な骨肉腫の組織標本や細胞株とはほとんど反応しませんでした。

本研究方法における最大のメリットは、細胞表面に実際に発現しているタンパク質を抗原とした抗体を作製できることです。本研究にて同定された多中心性骨肉腫に特異的に発現しているCAVIN1/PTRFは、多中心性骨肉腫を特定するための診断検査法および有効な治療法が存在しない多中心性骨肉腫の新規バイオマーカー(分子標的マーカー)として臨床応用できることが期待されます。

発表論文

タイトル:
A Novel High-Throughput Screening Method for a Human Multicentric Osteosarcoma-Specific Antibody and Biomarker Using a Phage Display-Derived Monoclonal Antibody.

掲載誌:
Cancers (Basel)

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