「がん」という病気について
がんという病気
がん(=悪性腫瘍)は現在の日本人は2人に1人は何らかのがんにかかるといわれています。がんとは体の組織を構成している細胞の遺伝子異常をきっかけに増殖する病気です。
がんの特徴
【自律性増殖】
もともとの正常細胞はある一定の新陳代謝のスピードでコントロールされていますが、がんになるとそれを無視してどんどん増殖してしまいます。
【転移、浸潤】
がんが進行すると原発(がんが発生した臓器組織)の周囲に組織を超えて入り込んでいきます。これを浸潤といいます。さらには血管やリンパ管を通って、元の臓器とは全く関係のない他の臓器にくっついてそこで増殖をしてしまいます。これを転移といいます。例えば、胃癌や大腸癌が肝臓に転移した場合は肝臓がんではなくて原発(ここでいう胃癌や大腸癌)が肝臓にできることになります。
【悪液質】
がんが進行してくると体が吸収した栄養をがんが吸収してしまうことにより低栄養、体重減少、筋肉量低下、意欲減退などが起こってきます。
がんの種類
【血液のがん】
血液(白血球、赤血球、血小板)は骨髄から作られます また、白血球の一部であるリンパ球が循環するリンパ節から発生するがん。
主には白血病や悪性リンパ腫、骨髄腫がこれに当たります。
【上皮細胞から発生するがん】
上皮とは組織の最も上に位置する(消化管などでは粘膜)細胞です。上皮組織より発生したがんを狭い意味での癌と表現します。代表的なものは咽頭喉頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、肝細胞がん、膵がんなどがあります。
【非上皮細胞から発生するがん】
非上皮とは組織の内部の細胞で脂肪や筋肉由来のがんがこれに当たります。主なものは骨肉腫、横紋筋肉腫、GIST、平滑筋肉腫、脂肪肉腫などあります。
がんの治療
代表的な治療
【緩和治療】
かつては緩和治療=終末期医療というイメージが強かったですが、現在では緩和的治療はがんと診断された時から始まるサポーティブケアの総称と考えてください。身体的なケアだけではなく精神的なケア栄養、運動など他のがんの治療と並行に行われていくがん治療の土台になります。
【手術療法】
多くの固形がんにとっては外科的な切除が根治的治療となります。手術療法の基本は原発巣と周囲のリンパ節の切除摘出です。癌腫によっては遠隔転移(例えば肝臓や肺など)を切除したり、残存するがんのボリュームを減らす減量手術、がんによって消化管閉塞がおこり食事不能な時にバイパスや人工肛門をつくる姑息的な手術を行うこともあります。手術を行ったのちは摘出した組織を病理検査を行い、追加の治療の有無を考慮します。現在の外科手術はより小さな傷で合併症を少なくし、根治性を下げることなく早期の社会復帰をめざすように考えられています。
【放射線療法】
放射線を照射することによりがんの増殖を抑える治療です。放射線治療は手術と同じく局所的治療です。がんの種類によって感受性(効きやすさ)が異なります。根治的照射あるいは緩和的照射があります。また、化学療法との併用(化学放射線療法)、手術併用療法などがあります。
【薬物療法】
薬物療法は手術、放射線と大きく異なるのは全身治療であるという点です。経口あるいは経静脈(径動脈)経路で投与される治療です。殺細胞性薬剤、ホルモン内分泌療法、分子標的治療薬などがあります。
【免疫治療】
薬物療法の一つとして近年話題の治療です。基本的な考え方としては本来自分の体に備わっている免疫力(外部からの侵入者を排除するためのシステム)を用いてがんを制御しようという治療です。古くからあるものとしては免疫力を増強してがんを攻撃しようとする治療で多くの治療がありますが、効果が一定ではなく多くは保険診療ではありません。
一方、近年話題の免疫チェックポイント阻害剤はがんが自分の免疫から逃げようとする(免疫寛容といいます。自分のリンパ球ががんを異物と認識できないようにするシステムです)能力を阻害して、自分のリンパ球ががんを認識して攻撃できるようにする薬剤です。現在坑PD-1抗体、坑PD-L1抗体、坑CTLA4抗体があります。