藤田医科大学 腫瘍医学研究センター

がん転移抑制を目指した薬剤開発

がん転移抑制を目指した薬剤開発

肺がんは年間死亡者数ががん腫中で1位であり、発がん過程の解明、予防、治療法の開発が強く望まれています。私たちはこれまで、肺がんの組織型特徴的な遺伝子発現プロファイルといった臨床情報に基づく研究から、肺がん発生と悪性化、転移に関係する遺伝子や経路を単離してきました。

例えば、私たちは、セラミド合成を介する肺がん転移機構の存在を発見しました。肺がんではCERS6と呼ばれるセラミド合成酵素が活発に活動をしています。その結果合成される代謝産物C16セラミドが、がん転移に必須なラメリポディアと呼ばれる構造体を形成して転移が引き起こされます。そこで、現在、この経路の詳細と、この経路を標的とした肺がん治療薬を開発中です。

また、肺がんの一部で、DNA修復因子POLD4遺伝子の発現低下が起きていることを発見しました。発現低下の起きている肺がんでは、DNA修復能が低下しており、種々の抗がん剤に対する感受性が高いと考えられます。

私たちの研究室では、この他に、放射線等によるDNA損傷、免疫細胞による生体防御に関する研究などもしています。

がん転移抑制を目指した薬剤開発

文責 分子腫瘍学 教授 鈴木元

関連文献
1. Suzuki M et al., J Cell Mol Med. 20:11949 2020.
2. Kajino T et al., EMBO J. 38; e98441, 2019.
3. 水谷泰嘉、鈴木元, がん生物学イラストレイテッド(羊土社)第2版; 185-192, 2019
4. Sato H et al., Nat Commun. 8; 1751, 2017
5. Yamaguchi T et al., Nat Commun. 7, 10060, 2016
6. Mizutani Y et al., Acta Histochem Cytochem. 49; 7-19, 2016
7. Niimi A et al., Genes Chromosomes Cancer. 55; 650-660, 2016
8. Huang QM et al., Cancer Res. 70:8407-8416, 2010.