藤田医科大学 腫瘍医学研究センター

がん転移の芽を摘む

「転移がん幹細胞」をその芽の段階で摘む

がんは転移すると依然として完治は難しいとされます。私たちは、がん患者さんの手術検体を活用した生体モデルを用いて、肝臓などから転移の初期段階にある「転移の芽」を分離し、その性質を分子レベルで解析しています(図①)。
がん転移が特定の臓器に指向性をもって起こる原因を、がん研究の巨匠Pagetは735例の女性乳がん患者の死後解剖の結果をもとに考察し、1889年に「種と土」理論を提唱しました。さらに近年の研究で、がん組織形成の根源にあるとされる「がん幹細胞」の性質をもつがん細胞は、転移病巣をつくる「種」となることが分かりました。そこで、固形がんにおけるがん幹細胞理論を提唱したスタンフォード大学のClarke教授のもとで学んだ知見を活用して、「がん幹細胞」(「種」)が転移臓器の環境(「土」)に適応して「生着」する過程(図②、「がん転移の芽」)を解析しています。
これらの研究により「種と土」理論の背景にある機構を理解して、治療困難なほど大きくなる前に「転移がん幹細胞」をその「芽」の段階で摘む方法を見出すことを目指しています。

「転移がん幹細胞」をその芽の段階で摘む

文責 生化学 教授 下野洋平

関連文献
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