藤田医科大学 がん医療研究センター

5-フルオロウラシル系抗がん剤の薬物代謝研究

5-フルオロウラシル系抗がん剤の薬物代謝研究

薬の代謝効率には個人差があり、薬の代謝が悪い人は薬の副作用が出やすい傾向があります。この個人差は遺伝的に決定されており、代謝にかかわる遺伝子を調べることで、どのタイプの遺伝子型が副作用と関連が強いかを調べることが可能です。
5-フルオロウラシル系の抗がん剤は広く使用されている薬ですが、稀に重篤な副作用を起こすことがあります。5-フルオロウラシル系の抗がん剤は3つの酵素で代謝、分解されますが、近年、欧米では1番目の酵素による代謝効率について薬剤投与前に遺伝学的または生化学的に検査することが推奨されました(表1;文献1,2)。また、私たちは2番目、3番目の酵素の働きの弱い人が日本人にいることを報告しました(文献3,4)。
欧米人と日本人では遺伝学的な情報に違う部分があり、副作用を来しやすい日本人での遺伝子型に関する情報が不足しています。
そこで私たちは、5-フルオロウラシル系の抗がん剤を使用される患者さんを対象に血液や尿を用いて、薬の代謝効率に関わる生化学的・遺伝学的情報を調べる研究をしています。日本人の遺伝子情報を集めることで、将来のオーダーメイド治療につながる可能性のある研究です。

欧米における5-フルオロウラシル系の抗がん剤の薬剤投与推奨量

 代謝酵素1:ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)について  (表1, 文献1)
  薬物代謝が普通の人 薬物代謝がやや弱い人 薬物代謝がとても弱い人
単核球中のDPD酵素活性 正常の70%以上 正常の30~70% 正常の30%未満
遺伝子 正常活性の遺伝子型 正常活性と活性低下の
遺伝子型両方を持つ
活性低下の遺伝子型のみ
推奨される投与量 通常投与量 通常投与量の25~50% 投与を避ける
日本人において代謝酵素2 、代謝酵素3の活性が弱い人が報告されているが、代謝酵素2、代謝酵素3については、
5-フルオロウラシル系の抗がん剤の薬剤投与量と副作用のとの関係は未解明(文献5,6)
文責 小児科学 講師 中島葉子

関連文献
1.Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium (CPIC) Guideline for Dihydropyrimidine Dhydrogenase Genotype and Fluoropyrimidine Dosing: 2017 Update.CPIC UPDATE Volume 103 Number 2 February 2018.
2.DPYD genotype-guided dose individualization to improve patient safety of fluoropyrimidine therapy:Call for a drug label update. Annals of Oncology 28: 2915–2922, 2017.
3.Dihydropyrimidinase deficiency in four East Asian patients due to novel and rare DPYS mutations affecting protein    
structural integrity and catalytic activity. Nakajima Y, et al. Molecular Genetics and Metabolism 122 (2017) 216–222.
4.Clinical, biochemical and molecular analysis of 13 Japanese patients with β-ureidopropionase deficiency demonstrates  
high prevalence of the c.977G > A (p.R326Q) mutation. Nakajima Y, et al. J Inherit Metab Dis. 2014 Sep;37(5):801-12.
2014.
5.Dihydropyrimidinase and β-ureidopropionase gene variation and severe fluoropyrimidine-related toxicity. Kummer, et al. Pharmacogenetics. 2015
6.Genetic Polymorphisms of Dihydropyrimidinase in a Japanese Patient with Capecitabine-Induced Toxicity. Hiratsuka M, et
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