藤田医科大学 腫瘍医学研究センター

総合消化器外科

藤田医科大学のがん手術の概要と特色

私たちは、高度な手術手技と周術期管理の技術に裏打ちされた患者さんの病状や病状に合わせた個別化低侵襲手術をモットーとして、がん手術における最後の砦となるべく日々診療に励んでいます。

低侵襲手術

①歴史的背景

私たちは、1990年代後半より、大きな手術を小さな傷から行うこと(いわゆる低侵襲手術、参考画像①)を実現すべく、当時最先端の腹腔鏡や自動縫合器を消化器外科領域の外科手術に取り入れ、腹腔鏡下手術の特長(拡大視・水平視)を活かし、その動作制限を克服するための独自の手技を確立し、その原理原則を医局員や他施設の外科医に伝承・発展すべく鋭意努力して参りました。1999年に世界で初めて進行胃癌に対する完全腹腔鏡下胃全摘術の手技を確立し(参考画像②)、2006年には本邦で初めて食道癌に対する気胸併用腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘の手技を確立しました(参考画像③)。これらの技術により、従来の開腹・開胸手術と比べて創縮小、術後疼痛軽減、早期回復、早期社会復帰などの術後短期成績改善効果が得られることが明らかとなりました(参考画像④)。ところが、手術に伴う合併症の発生頻度は開腹手術といわゆる低侵襲手術とで差がなく(参考画像⑤)、患者さんにとって本当に負担が少ない”真の低侵襲手術”とは何か、とても考えさせられました。

ロボット支援下内視鏡手術

同じ手術の規模でありながらも(根治性を落とさずに)合併症が少なく機能温存性に優れた手術を実現すべきという発想に至り、2009年に日本で初めてda Vinci S Surgical System (Intuitive Surgical, Inc.)を導入しました(参考画像⑥)。胃癌、食道癌、直腸癌、肝胆膵悪性疾患に対するロボット支援下内視鏡手術を自費診療として順次開始し、患者さんに病気の診断や標準的な治療法は元より、ロボット支援下内視鏡手術、従来型低侵襲手術、開腹・開胸手術それぞれの利点・欠点についても丹念に説明しながら症例を重ね(参考画像⑦)、内視鏡下手術用ロボットの性能を領域横断的に最大限に引き出すための独自の方法論を編み出し(参考画像⑧)、胃癌(参考画像⑨)・食道癌(参考画像⑩)の領域で合併症を軽減できる可能性を世界に先駆けて報告しました。その技術を国内外(参考画像⑪⑫)に広める活動を行いながら、2014年より先進医療B「内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下胃切除術」を主催し、腹腔鏡下胃切除術に内視鏡手術用ロボットを使用することで合併症発生率を半分以下に軽減できることを多施設共同研究として証明し(参考画像⑬)、2018年に胃切除、食道切除、直腸切除を含む12のロボット支援下術式が新たに保険収載されるに至った次第です(参考画像⑭)。

③次世代に向けての取り組み

近年、医療はテクノロジーの進化とともに高度先端化し、悪性腫瘍をはじめ様々な難治性疾患の治療成績が飛躍的に向上しています。一方で、医師にはその技術や知識の習得と更新にこれまで以上の修練が求められ、難易度の高い最先端の治療を安全に提供できる習熟した治療の担い手が慢性的に不足する事態に直面しています。また、治療の受け手である患者さんも、これまで以上に自らの病状や治療方法に関するより高度で正確な知識と理解が求められています。20年余りにおよぶ一連の活動の中で、最新の治療を受ける患者さん、将来患者や医師になる可能性がある一般市民の皆様、最新のテクノロジーを開発する企業や研究者、それを診療に活用する医師やコメディカルスタッフ、医療の安全性を担保する行政や学会等の諸団体の交流を支援し活発化する潤滑油的な組織を設置することで、先に述べた先端外科治療を巡る諸問題を軽減できると確信しています。以上のような認識に基づき、サージカルトレーニングセンター(参考画像⑮)や先端外科治療開発共同研究講座を学園内に設置し、安全な先端外科治療を普及するための手術トレーニングや日本初の実用型内視鏡下手術用ロボットの開発を行っています。皆様のご理解と幅広いご支援をお願い致します。

ゲノム診療時代の集学的治療

近年、Internet of Things (IoT)や人工知能(AI)など最先端のIT技術を駆使した個人のデータ化とバイオテクノロジーの進歩により、ゲノム診療に代表される医療の個別化が急速に進みつつあります。ロボットを活用した合併症軽減・機能温存に優れた低侵襲手術は、化学療法や放射線治療など手術以外の治療法と計画的に組み合わせることが可能であり、”個別化低侵襲集学的治療”という新たな治療体系の核となることが期待されます。