藤田医科大学 腫瘍医学研究センター

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域での低侵襲手術(内視鏡手術、ロボット支援手術)の特徴

咽頭がん・喉頭がんについて

咽頭や喉頭は飲み込み(嚥下)や声(発声)と密接に関係するため、咽頭や喉頭にできた癌は早期診断と体への負担が少ない治療が求められます。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科は消化器内科と連携し、最新の内視鏡を用いて咽頭がん・喉頭がんの早期診断を行っています。そしてがんの状態に応じて、Endoscopic Laryngo-Pharyngeal Surgery (ELPS)、Transoral Videolaryngoscopic Surgery (TOVS)などの鏡視下咽頭・喉頭悪性腫瘍手術や、最新の手術用ロボットであるダビンチを用いた経口的ロボット支援手術を行います。
ロボット支援手術では術者が3次元立体画像を見ながら、自由度の高く手ぶれの少ない正確な手術をすることができます。ELPS/TOVSと比較して術者のストレスが少ない、より複雑で繊細な手術手技が可能となります。ロボット操作には熟練を要するため、ダビンチ手術システム開始に必要なトレーニングをすべて修了して認証ライセンスを取得した医師のみが手術を行います(日本耳鼻咽喉科学会専門医、頭頸部がん専門医、かつ日本頭頸部外科学会におけるロボット支援手術教育プログラム修了)。耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、こうした専門医師を複数名配置しており、先進的かつ安全・確実な内視鏡手術、ロボット支援手術を提供することができます。

甲状腺がんについて

甲状腺疾患に対する手術では首に約5~10cm程度、副甲状腺疾患に対する手術では約3~4cm程度の皮膚切開をして行うことが一般的ですが、丁寧に皮膚縫合をしても頸部に切開痕が残ります。特に甲状腺の病気は女性に多いこともあり、術後の頸部創は整容面で問題となることがあります。そこで、鎖骨の下やわきの下など目立たない場所に切開を加えて内視鏡下に手術を行うVideo-assisted neck surgery (VANS)という術式で手術を行います。傷も従来より小さく、また衣服で隠れる場所であるため整容性が高い特徴があります。

メリット

ロボット支援手術の皮膚切開痕

咽頭がん・喉頭がんで行うELPS/TOVSやロボット支援手術のメリットは、頸部や顔面への外切開を加えることがないため身体への負担が少なく、術後の食事摂取もスムーズに再開しやすいです。また、外切開手術や放射線治療と比べて入院期間が非常に短くなることが挙げられます。最新の研究では、局所制御率や長期生存率も放射線治療と比べて優位であるとの結果も報告されております。
甲状腺癌などで行われるVANSのメリットは、整容面以外にも、内視鏡の良好な視野で重要な神経や血管、副甲状腺などが詳細に確認でき、反回神経(声帯を動かす神経)や副甲状腺(カルシウムを調整するホルモンを分泌する腺)の温存が容易になります。

適応

鏡視下咽頭・喉頭悪性腫瘍手術やロボット支援手術の適応は、中咽頭癌/下咽頭癌/喉頭癌の早期がんです。
甲状腺疾患に対するVANSは早期甲状腺分化癌だけでなく、甲状腺良性腫瘍、バセドウ病、副甲状腺腫も手術適応とします。甲状腺良性腫瘍では3cm以上の腫瘤か、3cm以下でも整容が気になる方、増大傾向のある場合など、バセドウ病では抗甲状腺薬での内科的治療でコントロールが難しい症例が手術適応となります。

これらの咽頭がん・喉頭がん・甲状腺疾患に対する内視鏡手術、ロボット支援手術の実施に際しては、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、消化器内科、内分泌・代謝・糖尿病内科、内分泌外科が協力して藤田医科大学病院頭頸部・甲状腺内視鏡手術センターとして診断・治療にあたっております。